月明りに照らされて

蒼風さんが創作について忖度無しに語り倒すだけのブログ

【作品感想】気になってる人が男じゃなかった/新井すみこ

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ツイッターから出てきた(らしい)作品

 こんばんは。この挨拶、もうちょっと考えた方が良いな。まあ、そのうち。でもこんばんは。本日扱う作品はこちら。

 気が付いたら百合系作品しか紹介しない人になってる……なってない?まあいいや。そのうちそれ以外も出てくるでしょう。出てくるよね?出てくると信じたい。

  話を戻しましょう。この作品、どうもツイッターから出てきたらしいんですよね。でも全く知らなかったんですよ。そりゃまあ、普段はリストでチェックしていてTLなんぞろくに見ていない人間が「知らない」なんてのは当たり前っちゃ当たり前なのかもしれないけど、それならなんで「高音さんと嵐ちゃん」は知ってたの?って話になるのでうーん。このあたりはたまたまってことなんでしょうか。

 そんなわけで、似たような経緯から出てきたけど、自分の認知具合が全く違う二作品をくしくも同日、っていうか連続で読んで、連続で感想を書いているわけなのですが。何から書こう。

 まず先に結論から言っておきましょうか。面白いです。自分の評価ランクで言うとに分類されます。されますって言ってますけど、正直SSと迷いました。このあたりなんでその選定をしたんだってことも後で書きますね。

ツイッターという制約を感じさせない上手さ

 まず、この作品、ツイッターから出てきたって話ですけど、その感じが全くない。どういうことかっていうと、ツイッターでは基本的に画像は4枚までしか添付できません。つまり、リプライという形でぶら下げていかない限り、そんなに連続した話にならないはずなのですが、その割には違和感なく続いているんですよ。

 で、読み終わった後によーく確認してみたら、きちんと切れてました。4枚で。よくよく見るとサブタイトルが付いているので、それで見分けがつきますけど、それが無くても、ツイッターから出てきたっていう前提条件で精読すると確かに切れ目があります。でもさらっと読んでいくとまず気が付かないレベル。これ、結構凄いと思う。

 それでいて、単体で楽しめる仕様になっている。まあどっちかっていうと長編よりのつくりをしているので、これでよくツイッターで伸びてきたなっていうのが個人的な感想です。割とそういうのに向かないというか、ぎりぎりのつくりじゃないかと思いますね。

上手いからこそ見える限界点

 で、話として繋がっているので続けて書いてしまいますけど、ツイッターで4枚づつという制約があることもあって、どうしても最後の最後で話の深みみたいなものが出来ってないかなというのが個人的な感想です。先にネガを書くなって話なんですけど、ここは繋げた方が分かりやすいと思うので。

 要は、ツイッター上で毎日4枚なりで連載していくと、どうしても前回の話を見ていないって人が出てくるじゃないですか。ってことになってくると、長いスパンで話を作りにくくって。その制約の中で作っていくってなると、最後の最後、「長い時間をかけてしないといけない話」が出来ないという部分が、少しデメリットとなって表れているなぁという感じがするんです。

 ただ、これはあくまで「あえて感じるところをあげるなら」って感じなんですよ。この所謂ぶつ切れのつくりで、こんなに綺麗に繋げる人初めて見たかもってくらいうまいです。

 でも、逆に、これだけ上手い人でも、最後の最後で踏み切れない弱点がでちゃうんだっていう感じで、ツイッターとかの連載から出てくるっていうところの限界みたいなものも見た気がします。

 これはもう、この作品が悪いとか、作者の技量がないとかじゃくって、ツイッターで有名になっていく作品の出来る、シナリオの限界点って感じですかね。やっぱりウェブって別にノアの箱舟でもなんでもないんですよ。それを実感しました。

王道、だけど上質で面白い

 ネガっぽく聞こえるかもしれないけど、内容は良いです。タイトルから分かるとは思いますが、要は「好き(推し)になった人が男じゃなくて女だったよ」っていう話です。

 後はまあ、ちょっとネタバレになっちゃうけど……でも、初期に分かる話だから書いちゃうと、その好きになった状態とは別の状態で、主人公(と言っていいのかは不明)と接する機会があって、同一人物なんだけど、主人公は全くの別人だと思っていて……みたいな話です。ちょっと分かりにくかったかな。

 他の作品を例に出すと、「月に寄りそう乙女の作法」みたいな主人公が女装してて……みたいな作品ってあるじゃないですか。それって主人公はヒロインたちに性別を偽って仲良くなってる側面があって、だから、性別を明かしたら嫌われちゃうんじゃないかみたいなのが葛藤としてあるわけで。その手の葛藤とちょっと近い性質のものがあるって話です。

 なんだろう、余計分かりにくくなった気がする。百合作品で言うと「不揃いの連理」ケララを重たくした感じ。伝わるかな……この例え……

 その手の構造って結構王道なんですよ。片方の関係性では仲が良い。けど、片方ではそんなことない。正体を明かしたいけど、明かしたら嫌われるんじゃないかみたいな葛藤。

 単純は単純だけど、王道で、やっぱり面白くなる作りなんです。それを使う作者の技量が良いこともあって、非常によく出来ていると思いますね。やっぱり王道は王道たるゆえんがあるって話。

ツイッターという制約のないシナリオを見てみたくなるバランス感覚が見事

 気になるところがあるとすれば、既に上記でも触れた通り、ツイッターの4枚で切れるっていう制約が若干シナリオの重厚感に対してストッパーになってる気配があることくらいでしょうか。

 でも、上手いですよ。上手い。ぶつ切りになりやすいネット上の連載でここまで綺麗に繋がって作れるって相当だと思います。だけど、そのストッパー分はやっぱり無視が出来ないから、ランクはSとさせてください。

 それが無かったらSSになってたかもしれないし、今後そういうランクに伸びる可能性もあるんですけど、現段階では、ということで。

 一応、擁護というか、言い訳みたいな話をしておくと、多分その辺のストッパー無しでシナリオ組み立てたらSSか、下手するとSSSが出てくる可能性はあります。バランス感覚が良いんですよね、とにかく。

 陰キャ陽キャみたいな用語も、邪魔にならないくらいの塩梅で使ってたりというか、そういうのって使い方次第でサムくなるんですけど、そうならないバランスをよく分かってる感じがします。なんだろう、編集力がある感じ。

 どっかで編集か、シナリオにアドバイスをするレベルで歴の長いアシスタントとかしてた……みたいな人だったりするんじゃないだろうか。最初からこんなテクニカルなこと出来るってあるのかなぁ。どうなんだろう。

紹介した作品

気になってる人が男じゃなかった VOL.1 (KITORA) 


 

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